Beauty Management Book 03 VISION
Japan Beauty Innovation P.G.C.D.
JAPAN代表の野田泰平が、 ブランドのルーツを旅する『Beauty Management Book』。P.G.C.D. JAPANを形作った“場所”“瞬間” “出会い”をめぐる旅の記録です。
その第3号のテーマは、P.G.C.D. JAPANが掲げる 「Japan Beauty Innovation」。
【Japonisme is the pride of Japan】【WABI-SABI is the last Beauty 】【Simple is Innovation】 というフレーズに込められた思いを紐解きます。私たちがどんな思いを抱きながら、どんな未来に向かって、どんな挑戦をしていくのか。2020年、新しく大きな一歩を踏み出す私たちの 変わらぬ思いを感じていただけたらと思います。
日本が永年培ってきた美しさは“誇り”。国境を超えて、進化していく。
印象派を代表する画家クロード・モネ。彼が晩年を過ごした、ジヴェルニーにある自宅が一般にも公開されています。代表作の一つである「睡蓮」のモデルとなった睡蓮の池が広がるこの地を、私が訪れた時に何より驚かされたのが、家中の至る所が浮世絵で埋め尽くされていたことです。
モネに代表されるように、日本文化は西洋文化に大きな影響を与えました。しかもそれはブームに終わらず、何十年にもわたって影響を及ぼし、アールヌーボーという大きな時代の流れの一翼を担うことになります。確かに1878年のパリ万博で日本画がはじめて公開されたときは、目新しい異文化に多くの人たちが飛びついたことでしょう。しかし一過性に終わることなく、その後もジャポニズムという言葉が今もフランスに定着しているのは、構図、空間表現、色彩など、日本美術がさまざまな面で大きな影響を及ぼしたからです。モネの作品の中には、明らかに歌川広重の版画の構図から影響を受けたとわかるものが見受けられます。フィンセント・ファン・ゴッホの大胆な色使いもまた、ジャポニズムの影響だと言われています。もしジャポニズムがなかったら、モネも、ゴッホも、ゴーギャンも、ロートレックも全く異なる作風になっていたかもしれません。
その影響は絵画の世界だけではありません。ドイツの名窯「マイセン」の絵柄にも、デンマークの名門陶磁器工房「ロイヤルコペンハーゲン」のロイヤルブルーも、日本の伊万里焼きが影響を及ぼしています。日本の文化が今も西洋の文化に息づいている。こんな素敵なことはありません。私たちもかつてのジャポニズムのように、世界の人々の心を揺さぶる“美しさ”を発信していきたいと願っています。
簡潔な先に、繊細さが在る。閑寂な中に、奥深さが在る。
「一輪の花は、百輪の花を思わせる」「狭小、簡素な茶室は、無辺の広さと無限の優麗を宿している」
川端康成がノーベル文学賞を受賞した際に『美しい日本の私』と題した記念講演で語った言葉です。ここで語られているように、日本人には形なきものに美しさを感じ、質素なものに豊かさを見いだす感性があり、これが日本人ならではの美しさを形成しています。この独特な美意識を象徴しているのが「侘寂」。
「侘」は侘しい・悲しいが転じて、簡素な様子、今では質素さ・慎ましさ、さらには渋い上品さという意味で用いられるようになりました。一方「寂」は、寂れるというように、朽ちていく様を表現した表面的なこと。この2つの言葉が対をなし、簡素なもの、時の流れを感じさせるものに美しさを見いだす心を表しています。散りゆく桜や苔むした石に情緒を感じ、一見何でもない器に新たな価値を見いだし、使い込まれた道具が醸し出す時の移ろいに想いを馳せる。これは“禅”の思想を体現する、佗茶へとつながっていきます。
“WABI-SABI is the last beauty ”侘寂こそ日本人が追い求めた究極の美しさであり、私たちP.G.C.D.が求めている美しさの真髄でもあるのです。
「引き算の美学」が、 世界の価値観を変えていく。
フランス語の最大公約数 “P.G.C.D.(Plus grand commun diviseur)”。私たちがブランド名にこの言葉を選んだ根底には、日本の文化に昔から脈々と受け継がれてきた「引き算の美学」と共通するものを感じたからです。例えば日本料理。西洋が素材にたっぷりのソースを加える「足し算」の文化に対し、日本料理は素材そのものを引き出すために調味料を使う「引き算」の調理法。利休が高めた“侘茶”もまた、引き算の美学を象徴するものだといっていいでしょう。極限まで削ぎ落とした石庭に水や山などの自然の世界を描き出す「枯山水」も同様です。
一時、この考え方は日本国内でも古くさいとされた時代がありました。ものがあることが豊かとされた時代です。でも飽食の時代は終焉を迎え、この引き算の美学は世界的にも見直されるようになりました。それはデザインだけに留まらず、ライフスタイルにまで広がり、世界中の人々の価値観を覆す変革を起こしつつあります。まるで、日本文化が海を渡り、ジャポニズムという名で西洋の文化に大きな衝撃をもたらしたように。かつて「生魚を食べるなんて野蛮だ」と言われていた和食が、いまでは寿司や刺身がヘルシーフードとしてもてはやされています。また日本人女性が著した「断捨離」や「片付け」の本が世界中で翻訳されるようになりました。
“Simple is innovation ” 私たちは「引き算の美学」を通して、本当に必要な最大公約数の価値を提供していきたいと考えます。
凝縮された力。研ぎ澄まされたカタチ。
利休は過飾なものを極限まで削ぎ落とし、たった二畳敷きの茶室に一期一会の世界を完成させました。それは、それまで絢爛さを競っていた価値観を一変させたといっても過言ではありません。このようにシンプルには世の中を変える力があると、私たちは考えます。だからこそデザインも、メソッドも、シンプルにこだわるのです。
<シンプルなデザイン>
私たちは『ロシオン エクラ』のボトルを開発する際に、石鹸と同じような、無駄を出さない美容液を目指しました。捨てるものが少なく、しかも衛生的で安心して使っていただけるカタチ。それがレフィルだけを詰め替え、ボトルは何度でも使える、とてもシンプルなカタチにたどり着いたのです。表面的な美しさだけではなく、風化されることのない価値を研ぎ澄ましたもの。それが私たちの求めたシンプルなのです。
<シンプルなメソッド>
無駄を削ぎ落とす。それは同時に、本当に必要なものは何かを見極めることでもあります。スキンケアの世界を振り返ってみると、世の中が進化しているというのに、未だアイテムは減るどころか、むしろ増え続けています。5つも6つもあるアイテムは本当に必要でしょうか。私たちは、スキンケアに本当に必要なものは「洗う」「潤す」ことだけだという答えに行き着きました。